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産業医の報酬は源泉徴収が必要? 個人の医師と法人で変わる消費税・インボイス、交通費・勘定科目と年末の手続き

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産業医に報酬を払うとき、経理の担当者がまず迷うのは「源泉徴収はいる?」「消費税はかかる?」「勘定科目は何にする?」の3つです。答えは、契約書と請求書の相手が個人の医師か、病院(医療法人)や医師の会社、紹介会社などの法人かで変わります。国税庁の資料では、個人の医師が受けとる産業医の報酬は、原則として給与として扱われます。ただし、医師が事業として業務委託で受けている場合など、時と場合によって扱いが変わるので、相手に確認することが大切です。このコラムでは、国税庁の資料をもとに、払う相手ごとの源泉徴収・消費税・インボイス、交通費、勘定科目の例、年末の手続きを、法人として産業医の契約をしている当事務所の立場からまとめます。

産業医の報酬の税金 3つのポイント

  1. 税の扱いは、払う相手が個人の医師か法人(医療法人・医師の会社・紹介会社など)か、どんな契約の形かで変わります。
  2. 個人の医師への報酬は、給与として源泉徴収することもあれば、医師が事業として業務委託で受け、消費税がかかることもあります。法人への委託料は、消費税の対象で、インボイス(適格請求書)を保存するのが基本です。
  3. どの扱いになるかは時と場合によるので、契約の前に相手に確認してください。迷うときは、顧問の税理士や税務署に確かめます。

この記事でわかること

  • 払う相手(個人の医師・法人)で、税の扱いがどう変わるか
  • 個人の医師に給与として払うときの源泉徴収のしかた(甲欄・乙欄と、月10万円の例)
  • 法人に払うときの消費税とインボイス、登録をしていない相手のとき
  • 紹介会社を通すときに、だれに何を払うか
  • 交通費の扱いと、勘定科目・会計ソフトの税区分の例
  • 年末にすることと、契約の前に決めておくこと

01産業医の報酬は、払う相手で税の扱いが変わります

産業医に選ばれるのは「医師その人」です。けれど、契約を結び、報酬を受けとるのは、医師本人のこともあれば、医師が勤める病院(医療法人)、医師が作った会社、紹介会社のこともあります。税の扱いは、だれと契約して、だれに払うかで決まります。

個人の医師に払う開業医・勤務医など、医師本人

  • 国税庁の資料では、原則として給与
  • 給与なら、会社が源泉徴収して納め、消費税はかからない
  • 給与なら、年末に源泉徴収票・給与支払報告書
  • 医師の事業として業務委託で受けているときは、扱いが変わることがある(相手に確認)

法人に払う医療法人・医師の会社・紹介会社など

  • 法人の売上(委託料)
  • 源泉徴収はいらない
  • 消費税(10%)の課税の対象
  • 控除にはインボイスを保存

国税庁 質疑応答事例「産業医の報酬」、タックスアンサー(No.2520・No.2792)などから整理しました。

国税庁の資料では「原則として給与」

国税庁の質疑応答事例は、個人の医師が会社から受けとる産業医の報酬は、所得税法では原則として給与として扱われる、としています。開業医が受けとる産業医の報酬も、原則として給与収入で、消費税はかからない(不課税)とされています。一方、医療法人が勤務医を産業医として送って受けとる委託料は、医療法人の収入で、消費税の課税の対象です。

個人の医師でも、業務委託なら扱いが変わることがあります

「原則として」とあるとおり、いつも給与になるわけではありません。医師が個人の事業として、業務委託の契約で産業医の仕事を受けている場合は、医師から消費税を含めた請求書(インボイス)が届くこともあります。どの扱いになるかは時と場合によるので、契約の前に、どういう形で受けているのかを相手に確認してください。

このコラムは国税庁の資料にもとづく一般的な説明です。個別の扱いは、顧問の税理士や税務署に確かめてください。

02個人の医師に給与として払うとき:源泉徴収のしかた

個人の医師に給与として払う場合は、ほかの社員の給与と同じように、源泉徴収税額表で所得税を計算して差し引き、残りを医師に払います。差し引いた所得税は、原則として、払った月の翌月10日までに、ほかの社員の給与の分と一緒に納めます。

甲欄か乙欄かは、「扶養控除等申告書」で決まる

税額表には「甲欄」と「乙欄」があります。どちらを使うかは、医師がこの会社に給与所得者の扶養控除等申告書を出しているかで決まります。申告書は、給与を受けとる勤め先が2か所以上あっても、1か所にしか出せません。

申告書を出していない

乙欄

医師が、勤め先の病院など、ほかの所に申告書を出しているとき

この会社の報酬は「従たる給与」。年末調整はせず、医師が自分で確定申告をします。

この会社に申告書を出している

甲欄

ほかに給与を受けとる勤め先がなく、医師がこの会社に申告書を出したとき

この会社の報酬は「主たる給与」。年末調整の対象になります。

国税庁 タックスアンサー No.2520「2か所以上から給与の支払を受けている人の源泉徴収」から。

例:月10万円の報酬を、個人の医師に給与として払う

乙欄(申告書なし)

毎月の報酬
100,000円
源泉徴収する所得税
−3,063円
医師に払う額
96,937円

105,000円未満は、その額の3.063%

甲欄(申告書あり)

毎月の報酬
100,000円
源泉徴収する所得税
0円
医師に払う額
100,000円

扶養親族などの数が0人でも、105,000円未満は税額0円

乙欄で差し引いた3,063円は、翌月10日までに、ほかの社員の給与の分と一緒に納めます。

国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」月額表から。社会保険料などを差し引かない場合の例です。2027年分の表では、3.063%になるのが111,000円未満までに変わるなど、税額表は年によって変わるので、払う年の表で確かめます。

契約のときに、住所とマイナンバーを受けとっておきます

給与として払うと、年末に医師の住所の市区町村へ「給与支払報告書」を出します。報告書には医師の住所とマイナンバーを書くので、契約のときに受けとる段取りを決めておくと、年末にあわてません。申告書を出してもらうか(甲欄か乙欄か)も、このときに確かめます。

03法人に払うとき:源泉徴収はなし、消費税とインボイス

病院(医療法人)、医師が作った会社、紹介会社などの法人に払う委託料は、法人の売上です。

  • 源泉徴収はいりません:法人に払う報酬・料金で源泉徴収が必要なのは、馬主である法人に払う競馬の賞金だけです(国税庁 タックスアンサー No.2792)。
  • 消費税(10%)の対象です:会社にとっては課税仕入れになります。国税庁の質疑応答事例も、医療法人が勤務医を産業医として送って受けとる委託料を、消費税の課税の対象としています。
  • インボイスを保存します:仕入れにかかった消費税を差し引く(仕入税額控除)には、相手が出したインボイス(適格請求書)と帳簿を保存します。登録番号(Tと13けたの数字)が書かれているかを確かめます。

消費税を簡易課税などで計算している会社は、仕入れの消費税を売上の額から計算するため、インボイスの有無は納める額に関係しません。自社の計算のしかたは、経理の担当者や税理士に確かめましょう。

インボイスの登録をしていない法人から請求が来たら

病院や医師の会社が相手でも、インボイスの登録をしているとは限りません。登録をしていない相手(免税事業者など)への支払いは、経過措置で、仕入れの消費税の一部だけを差し引けます。2026年度の税制改正で割合と期間が見直され、今は70%です。

支払いの時期差し引ける割合
2026年10月〜2028年9月70%(今はこの割合)
2028年10月〜2030年9月50%
2030年10月〜2031年9月30%
2031年10月から差し引けない

国税庁「令和8年度税制改正特集」(インボイス制度)、財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」から。経過措置を使うには、帳簿にその旨を書くなどの決まりがあります。

見積もりの段階で、税込か税抜かと、登録番号を確かめます

法人の見積もりや請求書は、消費税を足す前の額か、足したあとの額かで、払う額が1割ちがいます。見積もりを比べるときは税込か税抜かをそろえ、インボイスの登録をしているかも一緒に聞いておきます。

04紹介会社を通すときは、「だれに何を払うか」で分ける

紹介会社を通して産業医を頼むときも、考え方は同じです。契約書を誰と結び、報酬を誰に払うかで、税の扱いが決まります。

契約の形医師の分の報酬紹介会社に払う分
紹介会社と契約する料金は紹介会社へ。医師には紹介会社から払われる会社からは払わない委託料源泉徴収なし。消費税の対象(インボイス)
紹介だけ受ける契約は会社と医師が直接結ぶ医師が個人なら、原則として給与給与なら源泉徴収あり・消費税なし。業務委託なら扱いが変わることがあるので、相手に確認紹介の手数料源泉徴収なし。消費税の対象(インボイス)
直接契約紹介会社を通さない相手が個人なら原則として給与、法人なら委託料個人でも業務委託なら扱いが変わることがあるので、相手に確認なし

契約書の相手と、請求書・振込先の名義をそろえます

たとえば、契約書は医師個人なのに、振込先が病院(医療法人)の口座になっていると、給与として源泉徴収するのか、法人への委託料として払うのかがあいまいになります。契約書・請求書(または支払いの明細)・振込先の名義を、同じ相手にそろえましょう。

詳しくは『産業医の紹介会社と直接契約、どうちがう? 3つの契約の形と、契約の前に確かめること』

05交通費の扱い

訪問の交通費も、払う相手で扱いが変わります。かかった分を払うか、決まった額にするかは、契約で決めておきます。

払う相手所得税・源泉徴収消費税・書類
個人の医師(給与)事業場に通うための通勤手当として扱えば、電車・バスなどは、もっとも経済的で合理的な経路の運賃で1か月15万円までは所得税がかかりませんいくつかの事業場に通う人は、通った日数に応じた運賃の合計で判定します報酬と分けて払います報酬と交通費を一つの額にまとめると、通勤手当として分けられなくなります
法人(委託料)源泉徴収はいりません交通費も委託料の一部です交通費も含めて消費税の対象です請求書(インボイス)に交通費も入れてもらいます

国税庁 タックスアンサー No.2582「電車・バスなどの交通機関を利用している人の通勤手当」、質疑応答事例「数か所に勤務する者に支給する通勤費」から。新幹線などの扱い、グリーン料金は対象外なども、このページにあります。

契約書と支払いの明細で、報酬と交通費を分けて書きます

「毎月の報酬」「交通費(実費・定額)」を分けて書いておくと、源泉徴収や消費税の扱いがはっきりし、あとで確かめるときも迷いません。

06勘定科目の例と、会計ソフトの税区分

勘定科目は、法律では決まっていません。会社のほかの記帳に合わせて決め、毎年同じ科目を使います。大切なのは科目の名前よりも、給与として扱う分を、源泉徴収と年末の書類から漏らさないことと、消費税の区分を正しくすることです。

科目の名前は例です。どの科目にするかは、顧問の税理士と決めておきます。

給与の分を「外注費」などにして、源泉徴収を忘れないように

給与として扱う個人の医師への報酬を外注費や支払報酬の科目で記帳すると、給与として源泉徴収をしていないことに気づきにくくなります。源泉徴収した所得税を期限までに納めていないと、あとで納めるときに不納付加算税や延滞税がかかることがあります。

07よくある質問

産業医の報酬も、弁護士や税理士の報酬と同じように、10.21%で源泉徴収するのですか?

国税庁の資料では、個人の医師に払う産業医の報酬は原則として給与で、給与として払う場合は源泉徴収税額表(甲欄・乙欄)で計算します。弁護士・税理士などの「報酬・料金」の源泉徴収とは別のしくみです。医師が業務委託で受けている場合など、扱いが変わることもあるので、相手に確認してください。

病院の院長(医療法人の理事長)に頼んだときは、どちらになりますか?

契約の相手が医師個人なら、個人の医師への支払い(原則として給与)です。契約の相手が医療法人なら、法人への支払い(委託料・消費税の対象)です。契約書・請求書・振込先の名義をそろえて、どちらかをはっきりさせます。

個人の医師から、消費税を足した請求書が届きました。

医師が個人の事業として、業務委託で産業医の仕事を受けている場合は、消費税を含めた請求書(インボイス)が届くこともあります。国税庁の資料では、個人の医師の産業医の報酬は原則として給与(消費税はかからない)とされていますが、時と場合によるので、どういう形で受けているのかを相手に確認し、迷うときは税理士や税務署に確かめてから払いましょう。

産業医の報酬も、年末調整をするのですか?

医師がこの会社に扶養控除等申告書を出している(甲欄)なら、年末調整の対象です。出していない(乙欄)なら年末調整はせず、医師が自分で確定申告をします。どちらの場合も、源泉徴収票は医師に渡します。

源泉徴収をしていなかったことに気づいたら?

気づいた時点で、税理士か税務署に相談して納めます。期限を過ぎていると、不納付加算税や延滞税がかかることがあります。医師との精算のしかたも、あわせて相談します。

津山産業医事務所に頼むと、源泉徴収やインボイスはどうなりますか?

当事務所は株式会社としてご契約しますので、報酬の源泉徴収はいりません。請求書は、インボイス(適格請求書)でお出ししています。消費税は、課税仕入れ(10%)として扱えます。

08年末にすることと、契約の前に決めておくこと

個人の医師に給与として払ったとき

  1. 1

    源泉徴収した所得税を納める

    毎月:払った月の翌月10日まで

    ほかの社員の給与の分と一緒に納めます。

  2. 2

    年末調整(甲欄の医師だけ)

    12月の最後の給与のころ

    乙欄の医師は年末調整をせず、医師が自分で確定申告をします。

  3. 3

    源泉徴収票を医師に渡す

    翌年1月31日まで

    甲欄・乙欄にかかわらず、すべての医師に渡します。

  4. 4

    給与支払報告書を市区町村に出す

    翌年1月31日まで(2026年分は2027年2月1日(月)まで)

    医師の1月1日の住所の市区町村へ出します。2027年1月からは、これを出せば、税務署に源泉徴収票を出したことになります。

国税庁 タックスアンサー No.2505・No.7411、「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」、「源泉徴収票のみなし提出の特例」特設ページから。

法人に払ったとき

給与の書類はいりません。インボイスと帳簿を、決められた期間(7年間)保存します。

契約の前に決めておくこと

税の扱いで迷わないために、契約の前に決めておくこと

  1. 契約の相手(医師個人か、法人か)契約書・請求書(または支払いの明細)・振込先の名義を、同じ相手にそろえます。

  2. 個人の医師なら:給与として源泉徴収すること甲欄か乙欄か(申告書を出してもらうか)、住所とマイナンバーを受けとる時期も決めます。

  3. 法人なら:インボイスの登録番号見積もりと請求書が税込か税抜かも、そろえて確かめます。

  4. 交通費:実費か定額か報酬とは分けて、契約書と明細に書きます。

  5. 支払日と、請求書・明細の出し方毎月の報酬と、面接など頼んだ分の報酬を分けておくと、記帳しやすくなります。

  6. 迷うことは、払う前に確かめる顧問の税理士や税務署に、契約書を見せて確かめると確実です。

詳しくは『産業医の契約書のひな形:決めておく8つの項目と印紙、産業医を変えるときの手続き』『産業医の費用の相場は? 嘱託産業医の報酬の目安と決まり方、月額のほかにかかる費用』

税の扱いで迷わないためには、契約の相手と払い方を、はじめにはっきりさせておくのが近道です。

津山産業医事務所なら

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    当事務所は株式会社としてご契約しますので、報酬の源泉徴収はいりません。請求書は、インボイス(適格請求書)でお出しします。

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    従業員数・業種・ご希望をうかがい、訪問の頻度と内容をご提案したうえで、お見積りをお出しします。

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おわりに

このコラムのまとめ

  • 個人の医師に払う産業医の報酬は、国税庁の資料では原則として給与(源泉徴収あり・消費税なし)です。ただし、業務委託など時と場合で扱いが変わるので、契約の前に相手に確認します。
  • 給与として払うとき、甲欄か乙欄かは、医師がこの会社に扶養控除等申告書を出しているかで決まります。
  • 法人に払う委託料は源泉徴収がなく、消費税の対象です。仕入税額控除にはインボイスを保存します。登録をしていない相手は、今は70%だけ差し引けます。
  • 紹介会社を通すときも、だれと契約し、だれに払うかで分けます。契約書・請求書・振込先の名義をそろえます。
  • 交通費は報酬と分けて決めます。勘定科目に決まりはありませんが、給与の分は源泉徴収と年末の書類から漏らさないようにします。
  • 給与として払ったら、源泉徴収票を医師に渡し、給与支払報告書を市区町村に出します。

産業医の報酬の税金は、「医師に払うから特別」なのではなく、だれに、どんな契約の形で払うかで整理すると見通しがよくなります。扱いは時と場合で変わるので、契約の前に相手に確認し、払う相手と払い方を決めておきましょう。

産業医の仕事の全体は産業医とは? 仕事内容と役割を、会社の側からやさしく解説

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出典

このコラムは、2026年10月時点の内容で書いています。