ストレスチェックの結果は、心の健康にかかわる、とても大切な個人情報です。そのため、会社が実施していても、個人の結果は本人の同意がなければ会社には渡りません。誰が高ストレスと判定されたかも、会社にはわかりません。このコラムでは、会社が受け取れる情報と受け取れない情報、同意の取り方、結果の届け方と保存のしかた、社員から「会社に知られる?」と聞かれたときの答え方を整理します。
この記事でわかること
- 会社が受け取れる情報と、受け取れない情報
- 個人の結果を受け取るときの、同意の取り方
- 部署ごとの集団分析を受け取るときの決まり
- 結果の届け方と、保存のしかた
- 社内の規程で、先に決めておくこと
- 社員から「結果は会社にバレる?」と聞かれたときの答え方
01会社が受け取れる情報・受け取れない情報
ストレスチェックの情報は、会社が受け取れるかどうかで、次の3つに分かれます。
同意なしで受け取れる
- 誰が受けたかまだ受けていない人に声をかけるため
- 部署など、10人以上のまとまりの集団分析の結果
- 面接の申し出の有無
- 面接のあとの医師の意見残業を減らすなど、働き方の配慮について
同意があれば受け取れる
- 個人の結果本人に伝えた範囲まで
- 面接を申し出た人の結果申し出は、同意とみなされます
受け取れない
- 同意していない人の個人の結果誰が高ストレスかも、会社にはわかりません
- 病名や検査の値、面接で本人が話した具体的な内容
- 10人未満のまとまりの集団分析対象の人全員の同意がなければ
そもそも、会社は個人の結果を持たないのが基本です
国のマニュアルでは、個人の結果は原則として会社が入手すべきではない、とされています。同意を得て受け取ったときも、社内で共有するのは必要最小限の範囲にとどめます。外部の会社に任せていれば、会社が個人の結果を受け取ることは基本的にありません。
産業医も同じです
産業医も、実施者や共同実施者でなければ、本人の同意なしに個人の結果を見ることはできません(緊急に対応が必要なときなどは別です)。
詳しくは『産業医がストレスチェックの共同実施者になると、何ができる?』
02同意の取り方
会社が個人の結果を受け取るには、本人の同意が必要です。同意の取り方には、決まりがあります。
いつ取るか
結果を本人に伝えた
あとで取る
実施の前や、答えるときにまとめて取ってはいけません
どう取るか
書面か、
電子の記録で取る
電子の記録は、メールなど。口頭だけの同意ではいけません
どこまで渡せるか
本人に伝えた結果と
同じ範囲まで
多くてもここまで。それより詳しい情報は渡せません
同意を無理に求めない
同意を強く求めたり、強く求めていると受け取られるようなことをしてはいけません。同意しないことを理由に、不利な扱いをすることもできません。
面接を申し出たときは
本人が医師の面接を申し出たときは、申し出たことで、結果を会社に渡すことに同意したとみなされます。
ただし、衛生委員会などで話し合って決めておけば、会社に渡すのを「面接の対象者であること」だけにしぼれます。この場合、詳しい結果は会社には渡りません。
前もって知らせておく
面接を申し出たことや面接の結果は、会社に伝わります。面接の対象になった人には、このことを前もって知らせておく必要があります。
03集団分析は、10人以上のまとまりで
集団分析とは、部署などのまとまりごとに結果を集計して、職場のストレスの傾向を見るものです。個人の結果はわからないので、会社は本人の同意なしに受け取れます。
10人以上のまとまり
同意なしで受け取れる
10人未満のまとまり
対象の人全員の同意が必要
10人未満のまとまりの結果は、誰の結果か推測しやすくなります。そのため、対象の人全員の同意がなければ、会社は受け取れません。小さな部署は、ほかの部署とまとめて集計するなど、一人ひとりがわからない形にします。
集団分析の結果も、広めすぎない
部署ごとの結果は、その部署の管理職の評価につながるおそれもあります。社内で制限なく共有してはいけません。
詳しくは『ストレスチェックの集団分析とは? 結果を職場の改善につなげる方法』
04結果の届け方
個人の結果は、実施者から本人に直接届けます。本人以外の人に中身がわからない届け方にします。
よい届け方
- 封をした結果を会社に送ってもらい、総務の担当者などが本人に配る
- 本人の自宅に郵送する
- 本人だけが見るメールに送る
してはいけない届け方
- 面接の対象の人にだけ、職場で封筒を配る誰が対象か、周りに推測されてしまいます
- ほかの人も見られる形で渡す
面接の対象であることを知らせるときは
全員に結果を封書で届けるときに、対象の人には面接のお知らせも一緒に入れる、メールで知らせるなど、周りにわからないようにします。
詳しくはストレスチェックの始め方:外部に任せる? 自社で行う?
05結果の保存
| 記録 | 保存する人 | 期間 |
|---|---|---|
| 個人の結果同意のないもの | 実施者か、実施の事務の担当者外部に任せていれば、外部の会社 | 5年が望ましい |
| 同意を得て、会社が受け取った結果 | 会社 | 5年(義務) |
| 医師の面接の記録 | 会社 | 5年(義務) |
同意のない個人の結果は、会社は受け取れないので、会社として保存することはできません。実施者が保存するのが望ましく、難しいときは、実施の事務の担当者の中から保存の担当者を決めます。
06社内の規程で、先に決めておく
健康にかかわる情報は、健康を守るために必要な範囲で集めて使い、扱う人と範囲を社内の決まりで決めておくことになっています。ストレスチェックでは、とくに次のことを決めておきます。
規程で決めておくこと
- 1
実施者と、事務の担当者は誰か
- 2
個人の結果を、誰がどこまで見るのか
- 3
同意の取り方
- 4
面接の申し出先と、申し出たときに会社に伝わる範囲
- 5
結果の保存のしかたと、保存する場所
- 6
集団分析のまとまりの単位と、結果の使い方
50人以上の事業場は衛生委員会で話し合い、50人未満の事業場は社員の意見を聞く場で意見を聞いてから決めます。決めたことは、社内のネットに載せる、規程を配るなどして、実施の前に社員に知らせます。先に決めて知らせておくことで、社員が安心して答えられます。
国の規程のモデル例
国の小規模事業場向けのマニュアルに、ストレスチェックの規程のモデル例がのっています。会社の実情に合わせて直して使えます。
詳しくは『ストレスチェックの進め方:準備から報告まで』『健康情報の取扱規程の作り方:定める9つの項目と、国のひな形を使うときの注意』
07社員から「結果は会社にバレる?」と聞かれたら
ストレスチェックの案内をすると、社員からよく聞かれるのが「結果は会社や上司に知られるの?」という心配です。答え方の例をまとめました。
結果は、会社に知られますか?
本人が同意しなければ、個人の結果は会社には渡りません。同意せず、面接も申し出なければ、会社にわかるのは「受けたかどうか」(まだ受けていない人に声をかけるため)と、10人以上のまとまりで集計した部署ごとの結果だけです。
高ストレスと判定されたら、会社にわかりますか?
判定も個人の結果の一部なので、本人の同意がなければ、会社にはわかりません。高ストレスの人に面接をすすめるのも、会社ではなく実施者(医師など)です。
医師の面接を申し出たら、会社にわかりますか?
わかります。面接は、会社に申し出るしくみだからです。申し出ると、結果を会社に渡すことにも同意したとみなされます。ただし、面接のあとに医師から会社に伝わるのは、働き方の配慮に必要な意見です。病名や検査の値、面接で話した具体的な悩みは、会社には伝えないことになっています。
上司に、結果を見られることはありますか?
同意がなければありません。社員の解雇・昇進・異動を決める立場の上司は、ストレスチェックの事務を手伝うこともできません。同意を得て会社が受け取った結果も、上司や同僚に伝えるのは、働き方の配慮に必要な範囲だけです。
結果を会社に渡すのを断ったら、不利になりますか?
なりません。受けないこと、結果を会社に渡すのに同意しないこと、面接を申し出ないことを理由に、会社が不利な扱いをしてはいけないと、国の指針で決まっています。面接を申し出たことを理由にした不利な扱いは、法律で禁じられています。
答えは、聞かれる前に知らせておく
社員の心配には、聞かれる前に答えておくのがいちばんです。この5つの答えを実施の案内に入れておくと、ありのままに答えてもらいやすくなります。
個人の結果に会社がふれずに、面接や職場の改善につなげるには、はじめから産業医が関わるのが近道です。
津山産業医事務所なら
- 1
計画づくりから一緒に
実施の計画づくりの中で、誰が結果を扱うか、会社にどこまで伝えるかも一緒に決めます。
- 2
面接まで、続けて担当
高ストレスと判定された方の面接まで、産業医が続けて担当します。
- 3
部署ごとの結果を、職場の改善に
部署ごとの結果分析にもとづいて、職場の改善を提案します。ストレスチェックだけのご依頼もお受けします。
おわりに
このコラムのまとめ
- 個人の結果は、本人の同意がなければ会社には渡りません。誰が高ストレスかも、会社にはわかりません。
- 同意は、結果を伝えたあとに、書面などで取ります。面接の申し出は、同意とみなされます。
- 集団分析は、10人以上のまとまりなら同意なしで受け取れます。
- 結果は本人だけに届け、会社が受け取った結果と面接の記録は5年間保存します。
- 誰がどこまで見るかは、社内の規程で先に決めて、社員に知らせておきます。
結果がきちんと守られていると社員が知っていれば、安心してありのままに答えられます。それが、ストレスチェックを役に立つものにする近道です。
ストレスチェックのご相談は、津山産業医事務所へ
「うちは対象?」「何から始めればいい?」という段階から、お気軽にご相談ください。
出典
- 厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(ストレスチェック指針) 7の(3)〜(5)、10、11の(1)〜(5)
- 厚生労働省「ストレスチェック制度関係 Q&A」 Q7-2・Q7-3・Q10-1
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月) 8〜9ページ(意見の聴取と社内ルール)、18ページ(結果の通知)、19ページ(結果の保存)、29ページ(プライバシーの保護)、34ページ(規程のモデル例)
- 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」
- 法令:労働安全衛生法 第66条の10第2項・第3項・第104条・第105条、労働安全衛生規則 第23条の2・第52条の10・第52条の11・第52条の13・第52条の18
このコラムは、2026年10月時点の内容で書いています。



