時間外・休日労働が月80時間を超え、疲れがたまっている社員が申し出たら、会社は医師による面接指導をしなければなりません。ところが国の調査では、月80時間を超えた月があった人のうち、医師の面接指導を受けなかった人が76.7%いました。このコラムでは、対象になる人、会社がする手順と期限、面接のあとの対応を、法律と国の資料にそってまとめます。
この記事でわかること
- 面接指導の目的と、長時間労働が健康にどう関わるか
- 対象になる人(月80時間・100時間の線)と、管理職も入ること
- 労働時間の把握から、通知・申し出・面接・医師の意見・措置までの手順と期限
- 面接で医師が確かめることと、医師の意見の例
- 申し出を待つだけにしないための工夫
- 面接の当日の流れと、会社が用意するもの、記録に書くこと
- よくある質問(費用・面接の時間の給料・申し出がないとき・結果の伝え方など)
01面接指導は、脳や心臓の病気を防ぐためのしくみ
面接指導は、長時間の労働で疲れがたまった人について、医師が問診などで心と体の状態を確かめ、面接で必要な指導をするものです。医師は、そのあと会社に、働き方について意見を言います。国のマニュアルでは、長時間の過重な労働は疲れがたまる大きな原因で、脳・心臓の病気や心の病気との関連が認められているとしています。
労災の認定では、「月100時間」「月80時間」が目安
脳や心臓の病気の労災の認定基準では、次のような時間外労働があると、仕事と発病との関連が強いと評価できるとしています。
100時間
発症の前の1か月に、おおむね100時間を超える時間外労働80時間
発症の前の2〜6か月の平均で、月80時間を超える時間外労働2021年の改正で、この時間に届かなくても、これに近い時間外労働に、勤務間インターバルが短い勤務や休日のない連続勤務などの負荷が重なれば、関連が強いと評価できることがはっきりしました。
面接を受けていない人が、まだ多い
1.4%
この1年に、時間外・休日労働が月80時間を超えた月があった人76.7%
そのうち、医師の面接指導を受けなかった人厚生労働省「令和7(2025)年 労働安全衛生調査(実態調査)」。80時間を超えたすべての月で面接指導を受けた人は16.2%、一部の月で受けた人は7.1%でした。
詳しくは『勤務間インターバル制度とは? 終業から始業までの休息時間の決め方と、就業規則の規定例・導入の手順』『過労死ラインとは? 脳・心臓の病気の労災認定基準(月80時間・100時間)と、会社が防ぐためにすること』
02対象になる人
| 対象 | 時間の線 | 申し出 | 決まり |
|---|---|---|---|
| 一般の社員管理職や、裁量労働制の人も入ります | 時間外・休日労働が月80時間を超え、疲れがたまっている | 本人が申し出たとき | 義務 |
| 新しい技術や商品の研究開発の仕事をする人 | 時間外・休日労働が月100時間を超えた | 申し出がなくても | 義務(罰則あり) |
| 上の対象にならないが、健康への配慮が必要な人 | 会社が決めた基準にあてはまる | 会社が決めた方法で | 努力義務 |
「疲れがたまっている」かどうかは、本人の申し出で判断します
疲れは、ふつう周りからはわかりにくい自覚症状として出るため、国の通達では、申し出た人を「疲れがたまっている人」として扱うとしています。会社が「疲れているようには見えない」と判断して、面接をしないことはできません。
「時間外・休日労働」の数え方
会社の所定労働時間ではなく、法律の1週間40時間を超えて働いた時間で数えます。休日に働いた時間も入ります。
時間外労働の上限(労働基準法)とのちがい
時間外労働には、労働基準法で上限があります。上限を守っていても、月80時間を超えれば、面接指導の対象になりえます。
原則
月45時間・年360時間
時間外労働の限度時間
臨時の特別な事情があっても
- 時間外労働は年720時間以内
- 時間外・休日労働の合計は、月100時間未満
- 時間外・休日労働の合計は、2〜6か月の平均で月80時間以内
- 月45時間を超えられるのは、年6か月まで
研究開発の仕事は、この上限の対象から外れています。そのため、月100時間を超えたら、申し出がなくても面接指導をすることになっています。
詳しくは『管理職や裁量労働制の社員も、長時間労働者の面接指導の対象? 労働時間の把握と、80時間の数え方』『36協定の特別条項とは? 上限(月100時間未満・年720時間・年6回)と超えた場合、健康福祉確保措置の例と記録』
03会社がする手順と期限
- 1
労働時間の状況を把握する会社
タイムカードやパソコンの使用時間の記録など、客観的な方法で把握します。管理職や裁量労働制の人も入ります。記録は3年間保存します。
期限:働いた日ごとに
- 2
毎月、時間外・休日労働を計算する会社
毎月1回以上、決まった日に計算します。
期限:毎月1回以上、決まった日に
- 3
80時間を超えた人の情報を伝える会社
本人には、超えた時間を書面やメールなどで知らせます(給与明細に書いてあれば、それでもかまいません)。面接の受け方もあわせて案内すると、申し出やすくなります。産業医にも、名前と時間を伝えます。
期限:計算のあと速やかに(産業医へは、おおむね2週間以内)
- 4
本人が申し出る本人・産業医
産業医は、対象の人に、申し出るようにすすめることができます。
期限:計算した日のあと、遅れずに
- 5
医師が面接する医師
働き方、疲れのたまり具合、心と体の状態を確かめ、必要な指導をします。
期限:申し出のあと、遅れずに
- 6
医師の意見を聴き、措置を決める会社・医師
必要なら、残業を減らすなどの措置をとります。面接の結果の記録は5年間保存し、措置の内容は産業医に伝えます。必要に応じて、医師の意見を衛生委員会に報告します。
期限:面接のあと、遅れずに
「速やかに」は、国のパンフレットで、おおむね2週間以内とされています。
会社が指定した医師でなくても
本人が、会社の指定した医師の面接を望まないときは、ほかの医師の面接を受けて、その結果を書面で会社に出すこともできます。その場合も、会社はその結果について医師の意見を聴きます。
面接の当日の流れと、会社が用意するもの
面接は、医師と本人が1対1で、話がほかの人に聞こえない部屋で行います。面接の前から、面接のあとまでの流れの例です。
| すること | 誰が | |
|---|---|---|
| ① 面接の前 | 本人に、問診票と疲労蓄積度自己診断チェックリストに答えてもらいます。最近の労働時間や仕事の内容など、勤務の情報と、健康診断の結果を医師に渡します。 | 会社 |
| ② 面接1人20分ほど | 医師が本人と話し、勤務の状況、疲れのたまり具合、心と体の状態を確かめて、必要な指導をします。 | 医師・本人 |
| ③ 面接のあと | 医師が、働き方についての意見を意見書に書きます。会社は医師の意見を聴き、必要に応じて本人の話も聞いて、措置を決めます。 | 医師・会社 |
時間は例です。国の調査では、1人あたりの面接の時間は「10分以上30分未満」と答えた会社がいちばん多く、71.0%でした。話の内容や、本人の状態で変わります。
会社が用意するもの
- 本人の、最近数か月の労働時間の記録(時間外・休日労働の時間)
- 仕事の内容や勤務の状況のメモ(深夜の勤務、出張、休日出勤など。上司や人事の担当者から)
- 本人が答えた問診票と、疲労蓄積度自己診断チェックリスト
- 最近の健康診断の結果
- 話がほかの人に聞こえない部屋(オンラインなら、本人が1人になれる場所)
04面接で確かめることと、医師の意見
面接では、医師が次の3つを確かめることが、国の決まりで決まっています。
勤務の状況
労働時間、深夜の勤務、仕事の負担など
疲れのたまり具合
睡眠や休息がとれているかなど
そのほかの心と体の状態
体の症状や、気分の落ちこみなど
国のマニュアルでは、面接の前に、本人に問診票や「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」に答えてもらい、上司や人事の担当者から勤務の情報をもらっておくことも示しています。

医師の意見の例
国の意見書の様式例では、医師は働き方について、次の3つの区分で意見を出します。
通常勤務
今までどおり働いてよい就業制限・配慮
残業を減らすなど、働き方を変える要休業
休暇や休養で、仕事を休む就業制限・配慮の例(国の意見書のマニュアルより)
オンラインの面接も
面接は対面が原則ですが、医師が本人の表情やしぐさを確かめられることなど、一定の条件を満たせば、テレビ電話などで行うこともできます(国の通知)。
面接の記録に書くこと
会社は、面接指導の結果を記録して、5年間保存します。記録には、次のことを書くことが決まっています。
| 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 面接をした日 | 2026年10月15日 |
| 社員の名前 | (本人の氏名) |
| 面接をした医師の名前 | (医師の氏名) |
| 疲れのたまり具合 | 睡眠が5時間ほどで、疲れが翌日まで残る |
| そのほかの心と体の状態 | ときどき頭痛がある、気分の落ちこみはない、など |
| 医師の意見 | 時間外労働を月45時間までにする、1か月後にもう一度面接する、など |
労働安全衛生規則 第52条の5・第52条の6。面接をした医師からの報告に、これらがすべて書いてあれば、それをそのまま保存すれば足ります。「そのほかの心と体の状態」は、病名まで書く必要はありません(国の通達)。
詳しくは健康診断のあとの就業判定とは? 有所見者が出たら会社がすること高ストレスと判定されたら? 医師の面接の流れ『疲労蓄積度チェックリストとは? 2023年改正版の項目と点数の出し方、長時間労働者の面接での使い方』『社員の睡眠不足、会社ができることは? 長時間労働・夜勤・日中の強い眠気への対応と、国の睡眠ガイドの目安』『産業医の意見書とは? 健康診断・面接指導・復職の場面ごとの様式と、会社が従わないとき・本人に見せるとき』『オンライン産業医とは? 訪問する産業医とのちがい、オンラインでできない仕事と、選ぶときに確かめること』
05申し出を待つだけにしない
面接指導は本人の申し出で行いますが、国の調査では、受けていない人が多くいます。申し出やすくするための工夫です。
詳しくは衛生委員会の開き方:毎月の議題の例と、議事録の書き方社員のメンタル不調、会社は何をする? 予防から休職・復職までの全体
50人未満の事業場は
産業医がいない50人未満の事業場でも、面接指導の義務は同じです。地域産業保健センターに、長時間労働者の面接を無料で頼むことができます。
詳しくは『社員が産業医の面談を断ったら? 受ける義務がある面談・ない面談と、会社の対応』『50人未満の会社の健康管理とは? 産業医がいなくても会社がすることと、無料の地域産業保健センターの使い方』
06よくある質問:費用・面接の時間の給料・申し出がないときなど
面接の費用は、誰が払う?
会社です。法律で会社に面接指導の義務があるので、費用は会社が負担します。
面接を受ける時間に、給料は出る?
一般の社員の面接の時間の給料は、法律では決まっておらず、会社と社員で話し合って決めます。国の通達は、社員の健康を守ることは会社が仕事を続けるのに欠かせないので、給料を払うことが望ましいとしています。なお、申し出がなくても行う研究開発の仕事の人の面接は、労働時間として扱い、所定の労働時間の中で行います。時間外に行ったときは、割増賃金が必要です。
対象なのに、申し出がないときは?
一般の社員の面接は本人の申し出で行うので、無理に受けさせることはできません。産業医は、対象の人に申し出をすすめることができます。会社は、通知に面接の受け方や日時を書くなど、申し出やすくしましょう。研究開発の仕事で月100時間を超えた人などは、申し出がなくても面接をします。
80時間に届かない人も、面接を受けさせてよい?
はい。会社は、80時間に届かない人でも、健康への配慮が必要な人には、面接や、それに準ずる措置をするよう努めることになっています。対象にする基準は、衛生委員会で話し合って決めます。国の通達は、月45時間を超えた人も対象になるよう基準を決めることが望ましいとしています。準ずる措置には、保健師などによる保健指導や、チェックリストで疲れを確かめて必要な人に面接することなどがあります。
面接の結果は、本人に伝える? 上司には?
面接の中で、医師が本人に指導や助言をし、会社にどんな意見を伝えるかも説明します。会社は医師の意見を聴き、必要に応じて本人の話も聞いたうえで措置を決めます。上司には、仕事の量を減らすなど、職場で配慮するために必要な範囲だけを伝え、病名や検査の値などの細かい情報は伝えません。
詳しくは『疲労蓄積度チェックリストとは? 2023年改正版の項目と点数の出し方、長時間労働者の面接での使い方』『産業医の訪問日の準備:面談の調整・渡す情報・部屋と、当日の時間割の例』
国のマニュアルでも、面接指導は、その事業場の産業医が行うことが望まれるとしています。職場のようすを知っている医師が面接すると、働き方の意見も具体的になります。
津山産業医事務所なら
- 1
長時間労働の方との面談
長時間労働の方と面談し、残業の制限など、必要な措置を会社に意見します。
- 2
オンライン面談は全国に対応
訪問は中国・四国・近畿の14府県が中心で、オンライン面談は全国に対応しています。訪問とオンライン面談を組み合わせることもできます。
- 3
衛生委員会への出席
毎月1回以上開く衛生委員会(安全衛生委員会)に出席し、意見を述べます。
おわりに
このコラムのまとめ
- 時間外・休日労働が月80時間を超え、疲れがたまっている人が申し出たら、会社は医師の面接指導をします。管理職や裁量労働制の人も対象です。
- 労働時間を客観的に把握し、毎月計算して、80時間を超えた人には本人と産業医に知らせます。
- 面接のあとは医師の意見を聴き、必要なら残業を減らすなどの措置をとります。記録は5年間保存します。
- 申し出を待つだけでなく、通知に受け方を書く、産業医からすすめるなど、受けやすくしましょう。
- 面接の前に、労働時間の記録・問診票・健診の結果を用意し、話がもれない部屋で行います。費用は会社が負担します。
長時間労働の面接指導は、働く人が倒れる前に、医師が気づくためのしくみです。まずは、毎月の労働時間の計算と、80時間を超えた人への通知が、決まった日にできているかを確かめるところから始めましょう。
長時間労働者の面接のご相談は、津山産業医事務所へ
「うちは対象者がいる?」「通知や申し出の流れはどうつくればいい?」という段階から、お気軽にご相談ください。
出典
- 厚生労働省「働き方改革関連法解説(労働安全衛生法/産業医・産業保健機能の強化関係)」(労働時間の状況の把握の対象と方法、80時間を超えた人への通知の時期と方法、面接の案内をあわせて行うことが望まれること、「速やかに」はおおむね2週間以内、研究開発業務従事者とその面接の費用・時間、情報通信機器による面接)
- 「長時間労働者への医師による面接指導実施マニュアル」(労災疾病臨床研究事業費補助金 研究班)(ねらい、対象者の区分、80時間に届かない人への周知、面接の実施者、情報通信機器による面接の条件、事前の問診票と疲労蓄積度自己診断チェックリスト、面接の流れ、1人あたりの面接の時間の調査、本人への説明と措置の決め方)
- 厚生労働省「長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル」(平成27年11月)(就業区分と就業上の措置の例)
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「脳・心臓疾患の労災認定基準 改正に関する4つのポイント」(令和3年9月)(発症前1か月100時間、2〜6か月平均80時間、労働時間以外の負荷要因)
- 厚生労働省「令和7(2025)年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(第20表:80時間を超えた月があった労働者の割合と、医師による面接指導の有無)
- 経済産業省「中小企業支援者向け健康経営の推進支援ハンドブック(第1版)」(2026年8月)(地域産業保健センターの支援の内容)
- 通達「労働安全衛生法等の一部を改正する法律(労働安全衛生法関係)等の施行について」(平成18年2月24日 基発第0224003号)(「疲労の蓄積」は他の人にはわかりにくい自覚症状として現れるため、申し出た人を「疲労の蓄積があると認められる者」として扱う、面接の費用と賃金、記録は医師の報告をそのまま保存してよいこと、80時間に届かない人への措置と基準)
- 厚生労働省「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(上司などに伝える情報の範囲)
- 法令:労働基準法 第36条、労働安全衛生法 第66条の8・第66条の8の2・第66条の8の3・第66条の9、労働安全衛生規則 第14条の2・第22条・第52条の2〜第52条の8
このコラムは、2026年10月時点の内容で書いています。



